50歳の5歳の記憶

のんたん

2012年05月10日 14:16

幼いころの記憶で鮮明なものは、よほど鮮烈な出来事、印象が強かった事柄なのだろう。

50歳になる今の脳にくっきり残っている5歳の記憶。

幼稚園でお絵かきの時間。

青い空にぽっかり浮かぶ雲。
地面には、チューリップ。

雲と花に目線を合わせるように、笑顔を描いたわたしに

担任の先生は

「雲や花が笑いますか?笑わないでしょう?消しなさい。」と指導した。

言われるまま、雲の顔を白いクレヨンで

チューリップの顔を赤で塗りつぶした。

でも、いくら強くこすって上塗りしても、笑顔はうっすら目に残り。

夢中で描いていたその絵は、すっかり私のものでなくなり、続きを描かなかった。

その後学期末に持ち帰りに渡された絵の束の中から抜き、家で破いて捨てた。

几帳面な先生だった。

やさしかった。

好きだった。

だからそれ以来、雲にも花にも、顔を描かなかった。

芽生えた感性の一つを

好きな人の言葉で捨てた。

親でなくてよかった、と自分が親になって思った。

好きな人だったことには変わりはないけれど。


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