Sさんからの手紙
宅配便が届いた。
丁寧に梱包された荷物の中身は、小さな鉢植え。
虫食いの跡もある、かわいい苗葉が数枚でている。
手紙が添えてあった。
「前略
送りましたのは、生前ご主人が執務室におかれていた観葉植物です。
決済をいただきに行くたび、青々と力強く葉を広げていた姿を思い出します。
大切に育てておられました。
昨年ご主人が入院された後、水やりができず枯れてしまいました。
秘書官の方から、私が預かり、水をやったりアンプルをさしたりしてみましたが
枯れた枝からは再び芽はでませんでした。
ただ、実のようなものがついていて、根元の土におちているかもしれないと思い、
そのまま預かっておりました。もしも、新芽が出たらそれをお送りしようと・・。
そして、今月初め、土の上に小さな芽が出てきました。
最初のうちは、何の葉かわからず雑草かとも思いましたが、大きくなるにつれ、
ご主人が育てておられた植物の若芽だとわかりました。
亡くなられたご主人のことを思い出し、とてもとても、嬉しかった。
大変遅くなりましたが、ご主人がいつもそばに置かれていた観葉植物をお返しします。
少し、虫に食われてしまいましたが、お許しください。
直接お持ちするのも、またご負担かとお思い、宅送することにしました。
ご家族様の、ご多幸を、お祈りいたします。
7月12日 S」
・・・今夜は、ひとしきり、泣き日だ。
こんなあたたかい気持ちをいただける夫は、自身も、そういう気持ちを、人に渡せる人だった。
Sさん、ありがとうございます。大事にします。。。
再生の芽
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