真夏の妄想

のんたん

2013年08月11日 14:50



郷原宿に、心底惚れこんでる古民家がある。

売りに出て数年、買い手はついていない。

まだ売れていないのを確認するたび、嬉しい。

そうよ、このまま誰の物にもならないで、と祈ったりする。(笑)

お値段7000万円。

到底手の届くしろものではないのだが。

妄想を楽しむ。

たとえば宝くじが当たる。

あるいは、実は私が知らなかった遠いお金持ちの親戚がいて、相続人がいないのであなたに、とある日弁護士が訪ねてきたり。

はたまた、いきなり才能が開花し、芥川賞を取って印税がっぽりとか(笑)

そして、晴れて、この古民家の住人となり。

毎日せっせと、黒光りする床や柱を磨いては、むふふ、うふふと縁側で庭を眺めるのだ。

床の間の花は、庭から好きに選び。

料理に添える山椒の葉なんかも、そのつど、庭からとり、ぱんっと手のひらで叩いて香りを出して皿に添えるのだ。

こんな家に住めば、胡麻豆腐さえ、自分で作ってしまえるわたしになるのだ。

玄関には、香りのよいボケの実を置き、天然のフレグランスを楽しみ。


台所は、ひんやりとした土間で、調理をするときは、木の下駄に履き替え土の上に降りてするのだ。

裏から、薪を取り、竹の筒でかまどの火を噴くのだ。

剪定した庭木の枝を薪に、あるいは炭にして。

実家で祖父がしていたように、

焼いて程よく炭になった木に、さっとじょうろで水をかけ、残り熱でからっと仕上げて。

麻の袋に詰めて蔵に積んであったなぁ。

冬の炬燵はその自家製の炭を使っていた。

下駄箱にも消臭に置いていた。
米びつにも入ってたっけ。

小枝は小刀でささがけに削り、つまようじを作って。

ああ、おじいちゃん。庭の木を手入れし、余すところなく活用し、そうしてあの実家を愛でていたあの姿。

かくありたきと、年を重ねて思い至っている。

なくなってしまった実家を取り戻したい念が、この古民家への恋に変化している。








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