いってまいります
祖父の遺品の中に、多くの若者の軍服写真があった。
写真館でとったもの。
祖父は中学の教員であった。
元教え子たちが、出征前、軍服で写真を撮り、手紙を添えて祖父に送られたものと思われる。
いくつかそれらしい便せんも残っていた。
学生時代の想い出や、祖父への感謝や、家族のことなどが綴られてあり。
御国のため、という当時の思想も色濃くあり。
そして一様に、文末には「行ってまいります。」とある。
彼らは、帰ってきただろうか。
写真を恩師である祖父に送ってきた心情は、なんであったろう。
生きて帰る、と書けない時勢柄。
行ってまいります、は、お別れの辞であったろうか。
わたしが、ここにあったことを、覚えていてください、の内心か。
祖父と、写真を眺めながら、彼らの消息を聴いてみたかった。
修身教育を担っていた祖父は、どんな返信をしたためていたのだろう。
内心の葛藤は、いかばかりであったろう。
目を閉じるまで、寡黙を貫く人であった。
昨日の広島平和記念式典。
この後長崎、
そして15日の終戦記念日に続く。
花森安治 「無名戦士の墓」より朗読で引用
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