明るい声の中に聞く男50の想いに泣く

のんたん

2015年08月08日 23:20



ほろ酔いで農道をぶらぶらと帰りながら、今夜の対話を思い出していた。

夫がなくなった年、わたしは地区役をしていた。 

そのOB会があった。

「旦那さんの葬式の時の池内さんのあいさつで、俺、ぼろ泣きだったっすよ」 と話してくれた男性はことし、齢、50.

聞けばその翌年に、離婚し、家屋敷を家族に渡して単身、アパートに暮らしているという。

「娘とはよく会ってるんですわ。この間も何が食べたいって聞いたら、『ほんとになんでもいい?』って聞くんでもちろんっていったら。」

うん。

「それがさ、『家族で食べたあの、天丼が食べたい!』って言うんだ、これが。」

うんうん。

「それ、新潟っすよ新潟。 で、俺、娘乗せて、高速飛ばして行きましたよ、天丼食べに。」

そっか。。そうなんだ。

アパートに、家族と住んでいたころと同じ大きなテレビを買ったという。

でも段ボールに入ったまま開いていない、買ったはいいけど部屋、狭すぎて、と笑う。

明るくて饒舌でトップセールスマンの彼。

キャバクラのおねえちゃんたちの人気者でもある。

「キャバやめれば、もっと裕福なんですけどねぇ」 と皆の笑いを誘う。

ひとしきり、話題をさらって、折詰を持ち、車で迎えに来てくれた行きつけ店のママさんの車で

「じゃ!!ありがとうございました!また!」と楽しく退場。これからなじみと2次会でと消えて行った。

行きつけのどの店でも客として以上に愛されている様子がわかる。

見送って帰り路、ふと彼のなつっこい笑顔を思い出す。

「家族で食べたあの天丼」、で即座に「新潟」のその店、そのときのシーンが彼の中に浮かんだだろう想いを

勝手に共有して、泣けて。

幸せに、なっとくれよ~~!と、鼻をすすった。





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