始末の意味。
物事の始めと終わり。
締めくくり。
片付け。処理。
実父は始末のいい人だ。
身の回りを整理し、家を売り払ってその代金で有料老人ホームへの終身入居権を買った。
何も残さない、そのかわり面倒もかけない、お互い煩わしいのはよそうや。と。
自立棟での独居ながら、執事さながらに出入りしてくれるスタッフに見守られ老人生活を謳歌して暮らしてきた。
その父に膀胱ガンが見つかった。
来月、入院手術になる。
検査結果を聞きに行くのに、どうあってもわたしを同行させなかった。
母のときは、彼女には最期まで告知をしなかった。家族だけが呼ばれて説明を受けた。
それが頭にあったのだろう、独りで行くことにこだわった。
結果をきいたら絶対携帯に電話するようにしつこく言って待った。
全部自分で聞いてきたので、納得したのか、次の事前説明日には一緒に行かせてくれるらしい。家族の同意書もいることだし。
自分の始末は自分でできる。
頑固な親父で、とおす気らしい。
だからきっと、嫌がられながら、でもわたしは父に付き添いたい。
気がかりが義母の心情だ。
その昔、母を看取る半年間、義母は実家へ通うわたしを快く思わなかった。
誰のおかげで、家をあけられると思っていると息巻いて
仕事を辞めて母の病床に通う私に、看護のアルバイト料をもらってこいと言い放った。
義母に世話をかけてはと子供を送り出してから出かけ、下園時間に合わせて後ろ髪をひかれながら帰宅し、夕食の用意も手を抜かなかったが、そう言われてきた。
あの記憶がよみがえる。
義母には、父の所に行く日も仕事といってでかけよう。
もう、我が家に幼子はいない。迷惑はかけようがない。
食事の支度はきちんとしていく。
わたしも昔より強くなった。
馬耳東風、気兼ねを捨てて父のところに行きたいと思っている。