父はこの8か月、4階の病棟にずっと入退院を繰り返していた。
その間にすっかり4階の看護師さんや看護助手さんたちと顔なじみになっていた。
退院のたび、「○○さん、退院されるよ~」と声掛けをしあい、
奥からかけこむようにエレベーターの前に整列して、ドアが閉まるまで手を振ってくださった。
今回、個室の空きがなく、5階病棟に入院している。
父にしてみれば、なじみのない場所、なじみのない顔ぶれ。
どの階の病棟スタッフも同じようによくはしてくださるが、意思疎通が困難になってくるとよけいに
あうん、を欲する。
目を覚ますたび、4階に移りたい、としきりに話す。
そのことは、主治医も伝えてある。
夕方、4階の病棟長さんが、お見舞いに来てくれた。
「○○さ~ん、わかるぅ?4階病棟長の△△ですよ~。」
目を開けて、病棟長を見たその瞬間の、父のにっこりが忘れられない。
嬉しそうな父を見て、病棟長、「ちょっとまってて、元気の素を連れてくる!」ときびすをかえし
父が前回の入院時に配属された1年生看護師さんを連れてきた。
おとなしげな、素直そうなかわいい看護師さん。
くりくりとして目で、父の年寄りうんちくや小言までなんでも感心して
「そうなんですかぁ」「そうですね、すみません;ありがとうございます。」と
そのつどうんうん、と神妙にうなずき聞いてくれていてくれた人。
うまくしゃべれない父だったが「おー。ちゃんとやってるか?」といいたげな、にこにことうなずき。
「4階にうつれるまで、またちょくちょく見舞いにきますからね。ガンバっててくださいね。」と病棟長が声をかけると
うんうん、とまたうなずきを返す父。
父にとってのHomeは、いつのまにか、この病院の4階病棟になっていた感があり。
24時間入れ替わり立ち替わりお世話を担ってくださり、適切な処置をし、励まし、
ときに喧嘩もし仲直り握手なんてドラマもあった看護師さんもいて。
看とりは居宅でできたら、と思ってあれこれ模索もしてみた、病院での最期はさみしいのではとも思った。
でも、実際、施設の居宅で泊まり込みをしてみたり、かかわりを見るにつけ
父にとっての居心地、はこの病院にあるのかもしれない、と思えてきた。
人は「なじんだ」場所で休まる。
早く4階にうつれるといいなぁ。。
しかし。
毎日来てる娘の私にだって、少しくらいあの「にこにこ」が欲しいものだわ。
ぷんっ(笑)
まぁ、そのぶん、わたしはダーリンの病室で、にこにこしてもらうから、いいけどねぇ。