口を閉じていられない父は口腔内が乾燥して雑菌がつきやすく。
舌に厚いコケ状の汚れがうき出る。
看護師さんに教わって病院売店で舌をきれいにするジェルスプレーとスポンジブラシを購入し
くるくるっと口の中を拭きとりをしてみる。
痰の吸引のときは苦しいので、吸引機械音がすると口を結んでしまう父。
口の中、拭いてもいい?痛くないから。と声をかけてみる。
口をあーんと開けてくれる。ほっとする。
ここで痛い思いをさせてしまうと今度から開けてくれなくなるので慎重に、くるくる。
コケのような塊がぽろぽろっととれて舌がきれいになった。
かけらがのどに行かないよう入念にとれたものを掻きだす。
ジェルスプレーを事前に舐めてみたが、刺激のない薄いミント風味。
これならさっぱりするだろう。道具を置いておけば、検診の合間に看護師さんもやってくださるとのこと。
ありがたや。
昨夜、施設の相談員さんからメール。
「会っておはなしをしたいのです。時間をください。」と。
この相談員さんは、父の居宅フロアの担当者で、父の所にもよく顔を出してくれていたのだが、
途中から、父には父の論理と思いと憤慨があって、彼を担当から外して欲しいと施設に要望し、
以後の来訪を断った経緯がある。
それ以後は、介護保険のケアプランを作成してくれるケアマネさんが
相談員さんの代わりに居室への来訪を担っていた。
その彼から、勤務時間をとうにはずれた夜にはいった携帯メール。
どうしたものかと思いつつ、指定の午前中に施設に足を運んだ。
はなしがある、とはいっていたものの、とりたてて案件があるわけではなさそうで。
言い淀む気配に察しがつき水を向けると、本音を聞くことができ。
彼の心情に添う言葉を選んだ。
父は脳に転移があり、これは昨日今日に出た転移ではないはず。
脳の転移には脳腫瘍のように人格の変化がでることもあり、
だから、あなたとの行き違いも、きっと病気のなせるわざであなたの落ち度がすべてではないのだから
どうぞ、お気に病まず、あなたはよくしてきてくださったのだから。
家族として有難く思っているのですよと。
すると、自分の中で今回のこと(父からの排除)をどう昇華していいか暗澹としていたという気持ちと
職を離れた立場としてなにか力になれることはないかと思い募ってのメールであったこと、
お話して少し気持ちが楽になれた、と話してくれた。
「できることをさせていただければ。」と重ねて言ってくれたので
父が居室でレンタルしていた介護用品の返却手続きをお願いした。
即効で動いてくださった。
自分でやろうかと思っていたが、「お願いする」「お任せする」ということが
こんなふうに大事なときもあるのだと改めて感じ入った。
人とのかかわりは難しく、それゆえ汲み取り、相手の立場への慮りが大切なのだなぁ。。
そう思うと、自分の心の動かし方をかえりみる。
関わるそれぞれの「人」の想い、ちゃんと汲み取れているのだろうか、
自分の想いにとらわれて目が曇ることも、多いのではないか。
いっさいは、自身の信仰?というか、どう自分を戒めて行けるかにあるのだなぁ。
人生修業は、まだまだ足りていない。