涙腺が壊れた1時間
テレビCM。
タレントのぐっさんがパパ。娘と回鍋肉の大皿を差し向かいでつついている。
最後の一口を娘の箸がはさむと、ぐっさんの泣きそうな顔。
すかざず、ママがフライパンを持って登場。
作りたてあつあつの回鍋肉を、空になった大皿に、どばーっと追加。
ぐっさんパパの安心と至福顔のアップ。
笑えて泣けた。
まんま我が家の光景じゃん、という笑いと、
この光景は、今はないというせつなさ。
夫は、もう箸をのばせない。
わたしは、母の手料理で育っていない。
料理は、実家の頃は食いつなぐために最低限を。
料理らしい料理は結婚してから順に覚えた。
結婚から10年は、スクラップブックにレシピの切りぬきをどっさりためていた。
ひととおりができるようになったのは、
来る日も来る日も、子どもたちと夫が
箸を伸ばし平らげてくれる光景をわたしにくれてきたからだ。
美味しいという笑顔を与えてくれてきたからだ。
成育史の中で持てなかった家族風景を、わたしはこの家族で得ることができてきた。
育ててもらったのだ。
改めて、ありがたく、嬉しく、そしてせつない。
1時間、2階部屋にこもって涙腺の壊れるままにタオルを顔にあてていた。
回復。
顔を洗った。
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