ねぇ、そこにいる?ありがとう。

のんたん

2013年06月11日 02:13

明日は、視覚障害をもち、私たちの朗読サービスを利用してくださっている会員の方々と奈良井宿の散策。

カメラとボイスレコーダー、手帳に財布、携帯、行事保険証、指さし確認で。

さて散策だし、視覚ガイドなのだから、手ぶらでいける肩掛けバッグはなにかないかと棚を物色。

ちょうどのものがないなぁ、どうするか、と思案していたら、ふっと松本で暮らす、主の留守のままの下息子の部屋に気が向き。

冬仕様のままストップしている部屋をかけ布団を取り替えたりクローゼットの入れ替えなんかはじめちゃったりして。

そしたら、肩掛けバッグが出てきた。

夫の遺品。サイドポケットをさぐったら、地元の病院の領収書。

ここで、MRIも撮ってたのに、癌病巣を見つけてもらえもせずに・・・。

この領収書の日づけから2週間後に、歩けなくなった彼を車に押し込んで隣市の緊急外来に走って、そこで・・・。

なんて、いっとき走馬灯。

感情がもっていかれそうになり、

ぶんぶん、と首を振り。

よし。お父さん、明日はお付き合いくださいね、と、そのかばんで行くことにし、持っていくものを詰めはじめた。

そして、さて準備はいいかな、と思ったら、またふと、普段開けない2階の階段前のとびら棚に目が行き、なにげにあけると

ぽろっと、帽子が落ちてきた。

あら、なんでこんなとこに、帽子なんて仕舞ったんだろう、わたし。他には本と裁縫道具の棚なのに。

おととしまでかぶっていた、日よけつばが広がるジーンズ地の帽子。


あ。



ねぇ、そこにいる?

このかばんがあるじゃないか、って教えた?

散策だろ?日照るぞ、帽子かぶってけよって、教えた?

ねぇ、今、そこにいて、わたしに教えた?


きょろきょろと、宙を見回して、声をかけてしまった。


ありがとう。明日は雨は降りませんように。

帽子が役に立ちますように。

いいかばんだね。

肩にかけて、ひもの長さを調整した。

わたしにはちょっと長い肩ひも。

夫の、長さ。

一緒に、行こうかなって来てくれたのかしら。

そうなら、いいなぁ。。。




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