恥ずかしい
恥の多い生涯を送ってきました。
とは、太宰治「人間失格」の冒頭。
自分には、人間の生活というものが、見当つかない。
自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安。
そこで主人公が考え出したのが、「道化」ものとなることでした。
この名作を読むと泣けてしまうことがあります。
尊敬などという言葉をいただくときの恥入り。消えてなくなりたい衝動。
愛なんぞという言葉を聞けば、わたくしなんぞにだまされてはいけないと叫んでしまいたい羞恥心。
ほんとうのわたくしは、のっぺらぼう。すべては化粧(けわい)のつくりごと。
なぜあなたはきがつかないのです、と。
関係のぶっ壊しを試みる愚行さえでることもあり。
こっそり生きたいのに、人目の中で暮らす自分の矛盾への嫌悪や。
消え入りたい心と、透明人間ではなくそこにわたしとして見えていてほしい欲求と。
ああ、なんとあさましいと、おう吐するほどに身をよじっていながら、
人さまに、平和、平気、のんきな顔でいるのです。
あまりに愛に満ちた想いの中にいると
そんな「闇」に気がつきます。
ちょっと不幸、くらいが居心地の中では なり をひそめている
「生きる恥ずかしさ」
そうして思うのです。
そのような身よじりに見舞われている、ということは、
わたしは、いま、ありえなく、しあわせなのだ、と。
苦しさをもつことで、幸福にきがつく 道化なのだと。
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