プロ技術を持ってボランティアをする意味
NHKの全国巡回セミナー。
塩尻会場の世話人をさせていただいています。
このセミナーは、NHKをご退職後、エグゼクティブアナウンサーとして日本語センターで指導をしておられる講師陣が
春と秋に、都心講座に出かけられない地域の朗読者に向けて、手分けをして全国を指導巡回してくださるものです。
今回の講師は、旧知のK先生。現役時代、NHK長野放送局では部長をしておられました。
講座の中や、ご一緒した昼食時の余談のなかでお聞きした話。
お立場を明言せず、地域のボランティアにも参加しておられ。
過日は、重度の心身重複障害の方々の余暇活動で、
受け入れ先の職員さんが、K先生がアナウンサーとも知らず「絵本の読み聞かせをお願いできますか?」と。
「はいはい」と引き受けたものの。
プロとして、幾多の現場で「読み」をなさってきた中でも、
視線も反応も来ない、その方たちに本を読みながら。
普段、「聴き手に伝わる読みを」と指導する自分が、伝わっているかわからない立場で本を読むことに愕然とし、
迷いに迷ったと述懐。
そして職員の方に、
「伝わったのでしょうか。楽しんでくださったのかしらん。」と心配になり問いかけると。
ことば、わからなくても。
聴こえる声のぬくもり、リズム、高低、緩急、それを楽しんでいるのです。
とても、ええ、とても。楽しんでいたのが、わたしたちには、しっかりわかりました。ありがとうございました。
との返答に。
大きな衝撃と、認識がなかった自分に・・・とお話しされながら言葉が詰まり、一瞬の涙がありました。
そして、もっともっと、伝わる読みを、していきたいとお話になっておられました。
プロがプロとして必要とされる場所で仕事をする。
その中では体験できない「現場の現実」を、K先生はボランティアという活動の場所で受け取り、
極めたお立場の先を、研さんしておられる。
雲の上にいる方への共感は、大きな親近感となり。
確かな技術を持ってこそ、その技術でボランティアをしていきたいと改めて思った日でした。
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