てあて
友人が4月の頭にお引越しするので、少しだけ荷づくりのお手伝いにうかがっている。
帰り際、彼女が掃除機をかけている間に、しばらくの間お母様の体をさすらせていただいた。
「あら、どこかでお習いになったの?」「気持ちいいわ」と喜んでくださるので、
おしゃべりしながら、お背中から腰、足の裏から手のひらまでのフルコースになり。
なんだか、幸せだった。
手のひらを、あてる。さする。もむ。対象の部位が、あたたかくなっていく。
お顔を見ながら、お話お聴きながら、ゆっくりと、「手」あてをして行く時間は。
してさし上げながらも、いただいている時間なのだとも思う。
かつて。
母に、父に、夫に、その背中に、足に、腰に。この手のひらは動いた。
時は、永遠を許さない。ずっと、こうしていたいとどう願っても。
だが、幸せだった時間を、手の感触の記憶として残してくれている。
時間は、残酷だが、優しくもある。
彼女のお母様をあたためながら、わたしは、私の家族の体温を、思い出すことができていた。
ありがとうございます。
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