今回はどういう思考回路で行きついたのかわからない。
夕方、アイロンをかけていて、ふと頭をよぎった記憶。
たまに唐突に出てくることがある。
高校生のとき、一度だけ絵のモデル?をしたことがある。
あの時代は、刹那刹那に生きていることでいっぱいで、記憶が抜けている部分も多いのだが。
美術部の男子生徒に「人物画を描きたいので」と?、
いや、、、どういう経緯で受けたのかも、もうさだかな記憶はないのだけれど。
頭がよくて物静か、他の男子とわいわいとしているところは、あまり見かけない、大人っぽい人だった。
もっと、髪が長くてきれいだとか、目鼻立ちがいいとか
モデルにふさわしい子はいっぱいいるだろうに、とちょっと不思議ではあった。
数日間、美術室、だったろうか、教室だったろうか、
特にポージングもなく、ただ椅子に座って、モデルをした。
夏休みだったのだろうか、いつも二人きりで部屋にいた。
一緒にいても無口な人だった。
ほとんど会話もなく、絵を描く人と、描かれるために座る人。
ただお互いに黙って時間だけを共有していた。
疲れた?たいくつ?楽にしてて。
ときおり、そんな気遣いはしてもらったような気がする。
わたしは、ぼーーっとしているのが好きな人間だったので
長時間の静止もそう苦痛でなく、「ううん」と答えていた気がする。
気がする、としか、言えないのは、
ほとんど、あの沈黙と、止まったような時間の記憶が静止画としてしか頭に残っていないからだろう。
時間の流れから、切り抜いたように。
でも。
同じ空間の中で同じ時間を過ごしながら
なにか、言葉ではない会話が、あったのかもしれない。
脳の中の引き出しから、こんな小さなきっかけで、ふわっと引き出されてくる記憶なのだから。
きっと、わたしは、心地よさのなかにいたのだ。言葉をかわさずとも。
その絵は、仕上がらなかった。
それで、良かったのかもしれない。
遠い日の、ひとこま。
ただそれだけで、いとおしい記憶。