そば粉シェイクのプラセボ効果

のんたん

2013年11月12日 19:26

農協や道の駅には袋詰めのそば粉が並ぶ。いまじぶんは、「新蕎麦」シールがついている。

以前は、この時期にそば粉を買い求め、冷凍庫に常備していた。

おばあちゃん(姑)の常備薬だった。

体調が悪いと、「そば粉かいておくれや。」とよく言われたものだ。

生のそば粉を冷水で練り、氷を入れてさらにかくはんし、お抹茶のようなドロドロにして飲み干すのだ。

飲み干すと、「ああ、これでだいじょうぶ。」と、安堵のため息をついた。


おばあちゃんは6人兄弟の長女。乗鞍の山育ち。

下の弟妹とは10歳近く間がある。その間に、てて親が、肺患いをしていたらしい。

もう大きくなってから次々と弟妹が生まれ、「子守りに忙しくて、ろくにがっこ、いかしてもらえなんだ。」と述懐していた。

山の生活は、斜面に農作物を作っていたが、米は作れず。もっぱら悪天候にも強い蕎麦を作っていたという。


自身が育つ幼少期は、父の肺病み、大きくなったら、弟妹の世話で、母親からの愛情や手をかけた世話とは無縁であったろう。

その彼女にとって、そば粉のドロドロは、数少ない「母の愛薬」であったようだ。

普段は、そっけなく手をかけてもらえなくても

熱を出したり、寝込んだとき、母親は優しい。

手近にあるそば粉を、おかゆがわりに、あるいは水分補給水がわりに

わき水で溶いて飲ませてくれていたのだろう。

「おかあちゃんが、わたいを、かまってくれてる。」

その喜びは、大いなる偽薬効果となったはず。【偽薬(プラセボ効果)とは】

そば粉=万能薬 の刷り込みがしっかりとおばあちゃんの中に根付いた。

亡き夫も、この母親のそば粉信仰を受け継いで、そば粉飲みを大事にしていた。

さすがに、わたしには、その信仰の伝染は持てなかったが、

たしかに体にはいいのだろうとせっせと買い求めていた。


店の棚に並ぶ、そば粉を目にするたび、

あ、買わなきゃ、と瞬間思っては、

いや。もう要らないんだった、と伸ばしかけた手を、行き場をほかにごまかして要らない乾物を手に取り戻したりしている。






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