2011年11月16日
twilight

トイレに自力でなかなか立てなくなったことに気がついた夫は
枕元の携帯で職場に電話した。
もう一度はそちらに行って片付けをするつもりでいたけれど
残りの時間があまりなさそうなので。
申し訳ないが、私物と取り置いた資料の廃棄を頼みたい。
世話をかけてすまないけれど。と。
はなしぶりから、電話の先は後輩か、部下の方の様子。
あまり、まともにしゃべれなくて悪いな、聴きとれるか?
そっか。・・・ん。ああ、それはよかった、ご苦労さん。
仕事の経過のはなしかな。
電話で気力をつかったので、切った後はため息をついて、目をつぶる。
検査の結果、肝臓に群生していたガンは、それぞれの境目がなくなり、全体を覆い尽くして
肝不全の状態となっており。
骨転移は大腿骨と背骨の広がりに加え、新たに仙骨に進んでいた。
地元病院へ転院か在宅か、ターミナルをどう持っていくか調整をしてもらっている。
どちらに転んでも、すぐ訪問看護も使えるように介護保険申請を勧められた。
夫は、その後、来室したケースワーカーさんや先生から
メンタル緩和ケアを入れますか?の問いかけに
「メンタルは自身と家族でまかなえるので要らないですよ。」
なにか希望はありますか?の問いには
「先生にも家族にも、ここまでよくしてもらってきたのでもう何も。」と。
窓辺の夕日はこうこうと顔を照らす明るさから、だんだん落ちていく。
「・・・悪いな。せっかくいてくれるのに、話す気力もでなくて。」と私に声をかける。
ううん。全然。わたしにまで気を使わないで。綺麗だよね、眺め。。
お互いに静かなまま窓から落日を眺め
空が暗くなってから、ブラインドを落とし病室の明かりをつけた。
夕飯は、おもゆのほかに柿のすりつぶしにとろみがついたものがでて
なから、口にすることができた。
朝食はまったく手をつけられなかったから、これで少し安心。
「明日は何時に来られる?」
市役所に介護認定の申込したら来るよ。早い方がいい?
「うん。なるべく。その顔があったほうがいい。」
(笑) この顔でよければ。はいよ、なるべく早く来るね。
明日も、夕日がみられると、いいな。
Posted by のんたん
at 23:50
│介護